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「毎日電気を使ってるけど、仕組みとか料金とかよくわかんない」

「飲食店で使ってる業務用冷蔵庫って、普通の家庭でも使えるのかな?」

「従量電灯?低圧電力?動力?それって、いったいなにが違うの?」

明かりをつけて、快適な室温にして、ご飯を作って、お風呂も入る。

現代の生活に欠かせない電気ですが、どうやって作られ、私たちの家まで届くのかその仕組みを知っていますか?

そして、どうやって電気料金が決められているのか。

一般家庭では、電気の契約なんてあまり意識しないかもしれませんね。

でも商売をしている人、これから起業しようとしている人は、少しでもコストを削減できるものはないか、アンテナを張り巡らしていることでしょう。

普通に考えても、一般家庭に比べて、オフィスや事務所、店舗、飲食店、病院などは電気をたくさん使います。

業務用機器を使用していれば当然です。

そのため、従量電灯のほかに低圧電力(動力)の契約を結んでいる人もいるでしょう。

仕事をするには電気が必要だから、ある程度は電気代がかかってもしょうがない

そんな風に考えて、必要経費と割り切り、電気の契約自体を見直すことを考えたこともないのではないでしょうか。

でも2016年から始まった「電力自由化」により、電気契約の事情は変わってきています。

もしかしたら、今の電気代を安くすることができるかもしれない。

そのためにも、まずは電気の仕組み電気契約「従量電灯」と「低圧電力(動力)」の違いについて知っておきましょう。


「低圧電力」には「低圧電力」と「従量電灯」がある…?

「低圧電力に低圧電力がある」って意味が分からん!

実は、電気の契約について分かりにくくしている原因のひとつに、「電気の契約区分」があげられます。

そもそも電気は、電圧の高さによって、「高圧区分」と「低圧区分」に分けられます。

そして、一般家庭や事務所、飲食店、病院などで使う電気は、「低圧区分」の中の「低圧電力(動力)」または「従量電灯」のどちらか、場合によっては両方を契約しています。

つまり、低圧という言葉には、電力の区分電気契約の種類というふたつの意味があるわけです。

ホント、分かりにくいですよね。

でも、もうちょっと頑張って、「電気契約の種類」についてその違いを見ていきましょう。

契約種別が分かれているのはなぜ?

「電気料金の明細なんて、金額のチェックしかしてないなぁ」

気になるのは電気の使用量と利用料金ですから、どんな契約をしてるのかなんてことは、あまり気にしないですよね。

電気の契約について理解を深めるために、電気が供給される仕組みをもう少し詳しくみていきましょう。

そもそも電気は「電気設備技術基準及びその解釈」という経済産業省の省令に基づいて、低圧高圧の2種類に分けられています。

低圧は送電線を通ってやってくる6,600Vの電気を、電信柱上にある変圧器で100Vや200Vに変圧して各家庭や事務所、商店などへ送られます。

一方、高圧の場合は、施設内に設置した高圧受動設備で、100Vや200Vに変圧をして使用します。

これは大型ショッピングセンターや大きな工場などを想像してもらえるとよいでしょう。

高圧と低圧の境目を決めるのが50kVAという数字です。

50kVA未満で契約する場合は低圧となり、その中でも使用量によって従量電灯低圧電力(動力電力や動力プランなどと呼ばれる場合もある)で契約をします。

暖房や冷房などの空調設備から給湯器、料理をする際に利用する調理機器までを電気でまかなうオール電化住宅であったとしても、50kVAを超える電気を使用することはありません。

というのも、一般家庭で使用される電化製品の多くは、電圧が低くて安全な単相電源(単相100V、単相200V)を使用するからです。

一方、事務所や飲食店、商店などで業務用機器を使ったり、個人医院などの医療機器などの安定した動作が望まれる機械などを使用したり、また工場などで大きなモーターを動かす場合は、「従量電灯」のほかに低圧電力(動力:三相200V)の契約が必要となります。

業務用機器のみであれば低圧電力の契約、業務用機器のほかに家庭用電化製品なども使用するのであれば、従量電灯も一緒に契約するということになるでしょう。

そして契約電力が50kVAを超えてくる工場やショッピングモールなどになると、高圧電力を契約することになってきます。

このように「消費する電気量」によって、電気は契約種別が変わってくるのです。



電力の小売自由化とは

ここでちょっとおさらいです。

2016年4月1日から電力の小売りが全面自由化されました。

そもそも電気は、これまで各地域を管轄する電力会社によって発電、供給がなされてきました。

それが「電力自由化」によって、大手新電力以外の新電力(PPS:小売電気事業者)が参入し、いまは気に入ったプランのある電気事業者と自由に契約をすることができるようになったわけです。

この流れは、電話と同じです。

そのむかし、電話も「電電公社(NTT)」が一手に引き受けていました。
でも現在はNTT以外の会社と自由に契約することもでき、スマホや携帯電話とのセット料金などもあります。

いまは当たり前のように、たくさんある電話会社の中から自分にあった会社と契約しているのではないでしょうか。

でも、電気はまだまだ「気に入った小売業者と契約する」という気にはならない、という人も多いでしょう。

「だって、電話はいいけど、電気は契約変更して止まったら怖くない?停電なんていやだよ!」

確かに、電話よりも電気が止まる方が怖いですよね。
普通の家庭でも電気が止まったら怖いのに、商売している人ならなおさらでしょう。
仕事にならないし、せっかく来店してくれたお客さんにも迷惑を掛けちゃいますから。

だからせっかく自由化されて好きな会社から電気を買えるようになったのに、やっぱり大手電力会社から変えられないという人がたくさんいるのもうなずけます。

でも大丈夫なんです!
契約をする会社が変わっても、電気の供給はこれまで通り電力会社が行ってくれるんですよ。

つまり、単純に契約先が変わるだけで、電気の供給はこれまで通りと考えて大丈夫なんです。

ちょっと安心できました?

大手電力会社にはない新電力の魅力的なサービス

「電力自由化」は2000年に大規模工場やオフィスビルを対象に始まり、2016年の家庭や商店などを含むすべての消費者が対象となりました。

顧客を獲得するために各小売電気事業者では、電力利用の少ない夜間の料金を安くする「時間帯別割引」や、ガス料金などとセットにした「パック割引」などの様々な独自プランで販売しています。
今後も新たな料金プランやサービスが続々と登場するでしょう。

新しい料金プランの利用を検討したい人や、都会に住みながらふるさとからの電気の購入をしたい人、ほかにも居住地近くの自治体から電力を購入する地産地消など、自身のライフスタイルや価値観で電力会社を自由に選択できます。

しかし、いざ電力会社の切り替えを検討してみても、事業者はどこを選ぶべきか、トラブル時の対応についての不安もあって、なかなか切り替えに踏み切れないという人もいるでしょう。

そもそも「どうせ、そうたいして安くならないよ。考えるだけムダ」と比較することすらしない人もいるかもしれませんね。

でも生活に密着した大切なライフラインとなる「電気」だからこそ、電力会社の切り替えを慎重に考え、また日ごろから節電意識も持ちたいですよね。

ただ、現在、小売電気事業者として約485社(2018年6月現在/経済産業省資源エネルギー庁)が登録されています。
電力会社やサービスの数が豊富になっているため、選ぶ基準を明確にする必要があります。

ただし、ひとつだけ安心できることがあります。
それは、電気を供給(家まで送り届けている)している会社は何も変わりがないということです。

ということは?

そうなんです!

どこの電力小売業者から電気を購入しても、電気の質には変わりがないということなんです。
言い換えると、もし万が一トラブルが起こったら、そのときはすべての電力小売業者でも問題が発生していることになるわけです。



従量電灯とは

ここまでで電気の仕組みを見てきましたが、いよいよ「低圧電力」と「従量電灯」の違いについて詳しく説明していきます。

「うちは商売してるけど、三相機器なんて使ってないよ。それでも低圧電力の契約なの?」と疑問に思った人はいませんか?

なにも商売をやっているから、必ず低圧電力を契約しているとは限りません。
従量電灯の契約だけでも、十分商売をすることは可能です。

一般家庭はもちろん、FAXやコピー機、家庭電化製品しか使っていないという商店や事務所などでは、従量電灯の契約だけで十分でしょう。

従量電灯はさらにA、Bの2種類、あるいはA、B、Cの3種類のプランに分かれ、使用する電気量によってどのプランを契約するかが変わってきます。(電力会社によって区分は異なります)

マンションの共有スペースやアパートの廊下などの照明のように少ない電気で済む場所もあれば、賃貸アパートや戸建てなどの一般家庭向け、オール電化住宅向け、さらに小規模の商店や事務所向けなど、主に契約電力が50kVA未満までの契約プランが用意されています。

従量電灯の料金計算方法

「電気料金に明細に記載されている、基本料金と電力量料金ってどういう意味?」

はい、お答えします。

従量電灯の料金は、主に基本料金電力量料金で構成されています。
「基本料金」は契約アンペア数や最大需容量によって変わり、最大需要容量とは同時に使用する電気機器の最大容量を意味します。

もっと簡単に言えば「一度に使える電気の量」のことです。例えばブレーカーに「30A」と書いてあれば、この電流が一度に流れるような複数の電化製品を同時に使えば、ブレーカーが落ちて電気がストップされるわけです。

エアコンと電子レンジ、炊飯器、さらにドライヤーのスイッチを一度に入れたら、ブレーカーが落ちたなんて経験はありませんか?

この場合は、契約アンペア数を大きくするか、あるいは使用するタイミングをずらして一度に消費する電気量を減らせば、ブレーカーが落ちるのを防ぐことができます。

また「電力量料金」は三段階料金制度が適用されていて、電気の使用量によって電力量料金単価が変わるようになっています。この三段階料金制度とは、電気の使用が多ければ単価も高くなって、電気代が上がるという仕組みです。

電気使用量の検針票などをみると、「電力使用量単価」が三段階で記載されているのを実際に目にしたこともあるでしょう。

と、このようにして従量電灯で契約したときの利用料金が計算されているわけですね。

なお電気料金は、東日本や九州では、各家庭に設置したブレーカーの容量(アンペア)によって基本料金が決まる一方、西日本では基本料金がありません。
基本料金がない代わりに、電力量料金の1段階目の単価が東日本より高めになっています。

このように地域によっても違いがありますが、電気料金の仕組みを知っておくことで、電気料金の明細をいままでよりじっくり見ることができるのではないでしょうか。



低圧電力とは

「低圧電力って結局、どんなときに使うんだ?」

では次に低圧電力についてみていきましょう。

低圧電力とは従量電灯契約よりも多くの電気を消費する、飲食店や工場などが契約するプランです。原則、契約電力が50kW未満の場合に限られ、50kW以上になると高圧電力の契約が必要となります。

たとえば、工場などポンプやモーター、大型エアコンや業務用冷蔵庫などの三相200V電源を必要とする機器を利用する場合に契約します。

もし一般家庭で、三相200Vの業務用エアコンや冷蔵庫を設置しようとしても、実は低圧電力を契約することはできません。
というのも、一般家庭の屋内配線は敷設してもよい電圧上限(対地電圧)が150Vと決まっていて、対地電圧が200Vである三相200Vは使用することができないのです。
(ただし、特定の条件を満たせば使用することはできます)

◆ 参考:電気設備の技術基準の解釈 第162条

なお、業務用機器といっても、単相100Vや200Vで動く機械もあります。こちらは一般家庭でも利用可能です。

ただし普通よりは電気の量が多くなるため、現在の契約アンペアを上げたり、専用コンセントを別に準備したりする必要があります。

低圧電力の電気料金の決定方法


次に低圧電力の電気料金の決まり方についてみていきましょう。

低圧電力も従量電灯と同じように、基本料金と電力量料金の合計となります。従量電灯と違う点は、基本料金の元となる契約電力を決定する方法が2種類あることです。

ひとつは家庭と同じように電子ブレーカーの容量を元に決定する主開閉器契約で、もうひとつは使用する電化製品の容量(出力)の合計で決定される負荷設備契約です。

主開閉器契約は電気設備の台数に影響を受けず、使用する電子ブレーカーの容量にあわせて契約します。
一方、負荷設備契約の場合は、使用する機器の容量を登録して、合計でどのくらいの電気が消費されるかを計算したうえで契約電力を決めます。

● 低圧電力の契約容量、契約電力の決定方法

契約方法 特   徴
負荷設備契約 使う電気機器の総容量に、一定の係数を乗じて契約電力を算定します。工場などで長時間や24時間フル稼働する電気機器がある場合はこちらの契約が有利です。
主開閉器契約 メインブレーカーが算定対象になります。一度に多数の電気機器を使用しない場合に契約電力を低く抑えられますが、契約アンペアを超えてしまった場合にはブレーカーが落ち、停電するおそれがあります。

基本料金は契約電力1kW当たりの単価で、電力量料金は月間使用量1kW当たりの単価と使用量で決定されます。
さらに電力量料金は夏季に単価が高く、それ以外の季節では低くなっています。

もし従量電灯と低圧電力の両方を契約するのであれば、最大需要容量または「契約容量と契約電力」との合計が50kW未満であることが条件です。

従量電灯と低圧電力を一緒に契約すると当然基本料金は高くなりますが、電力量料金単価が安いので、逆にたくさんの電気を使う場合はお得に利用することができます。

なお、低圧電力の基本料金の決定方法は、使用する電気機器の「力率」と呼ばれる実際に使われる電力の割合によって、料金の割引や割増しがあります。これは従量電灯契約などにはありません。

単相、三相の疑問あれこれ

従量電灯と低圧電力の違いをお分かりいただけでしょうか。
使用する機器によって従量電灯、低圧電力(動力)、その両方と契約の種類も変わってくるわけですが、ネット上で単相、三相に関するこんな質問をみかけました。

    • 200V機器は100Vコンセントで、またはその逆パターンで使用できる?
    • 三相200Vから単相200Vや単相100Vの電源を取り出せる?
    • 業務用エアコンは三相、単相どっちがお得?

ひとつずつ解説していきます。

Q.200V機器を100Vコンセントで使える?

例えばIHクッキングヒーター、大型エアコンなど単相200Vで使用する機器を単相100Vコンセントで使うとどうなるのでしょうか。

この場合は電圧が足りずにモーターだけが回転し、機器そのものは動きません。
さらに、過熱から発火する危険性があります。

基本的にIHクッキングヒーターや大型エアコンを設置する場合は、単相200Vのコンセントを増設するのはこのためです。

せっかく買った新品のエアコンが壊れてしまったという悲しい思いをしないよう、200Vなのか100Vなのか、しっかり確認する必要がありますね。

Q.100V機器を200Vコンセントで使える?

100V機器を200Vコンセントに接続すると、先ほどとは違って、機器に本来必要とする2倍の電気が流れることになり、過電流となって故障します。

最近の大型エアコンは200Vのものが多いため、専用コンセントが取り付けられている場合があります。そのことに気づかず100Vのエアコンに変えてコンセントに接続したら、ボンッとなって故障した、という話もあります。

https://twitter.com/PeaceLove_fps/status/791525531355185152

Q. 三相200Vから単相200Vや単相100Vの電源を取り出せる?

三相200Vは、条件を満たせば一般家庭でも利用できるわけですが、ほとんどの家電製品は単相100Vでの使用が原則です。大型エアコンや食洗器、IHクッキングヒーターなどの一部の家電のみ200Vを使用します。

そこで、ホームセンターなどで売られている変圧器(ダウントラスト)を使って、三相200Vから単相200Vや単相100Vを取り出して使用したいと考える人もいるでしょう。

技術的に可能ではありますが、しかしそういった使用方法は電気供給約款違反となる可能性があります。
もしかしたら、遡って追加徴収されてしまうかもしれません。

単相電源が必要なら、新たに従量電灯を契約する、あるいは契約の見直しをしてみるとよいでしょう。

Q. 業務用機器は三相、単相どっちがお得?

業務用機器は三相200V電源だけでなく、単相200V電源のものもあります。
ただ従量電灯の契約で使用する単相200Vの場合、エアコンなら1.5馬力から3馬力までと決まっています。

3馬力ってどのくらい?って思いますよね。
使用する環境や部屋の形によっても変わってきますが、業種別に3馬力のエアコンがどのくらいのスペース向きかを表にしてみました。

業種 広さの目安 畳数
事務所、オフィス 35~76㎡ 10.6~23坪 20~46畳
商店 44~50㎡ 13.3~15.1坪 26~30畳
飲食店 22~42㎡ 6.6~12.7坪 12~25畳
理美容室 28~35㎡ 8.4~10.6坪 16~20畳

※例)ダイキン業務用エアコン3馬力(冷房性能)の広さの目安(単相200V電源機器)

◆ 参考:ダイキン│容量(馬力)から選ぶ

単相200V電源の3馬力エアコンでも、おおよそ10坪までは十分対応できます。

「面積が10坪もないから家庭用で十分」

そう考えるのもアリです。しかし、人の出入りが多い飲食店や理美容室、PCをたくさん使う事務所やオフィス、さらに天井高のある店舗、24時間つけっぱなしのような場合は、快適な室温を維持するためにはもう少し高性能な業務用エアコンの方が向いているでしょう。

「うちはどっちの契約がいいのかな?」
そう悩んだときは、店舗の図面や使用環境などを相談したうえで、業務用エアコンを取り扱う専門業者に見積もり依頼をしてみると良いでしょう。

まとめ

低圧電力と従量電灯の違いを知ることで、最適な電気契約を選ぶことができ、それが節約につながります。

電気の使用量が多いのであれば低圧電力を、一般家庭程度の電気使用量であれば、従量電灯の契約でも業務用機器が使用できます。

いまある電気契約のままで、例えば三相200Vから単相100V電源を取り出して使うのは契約違反になったり、あるいは200V機器を100V機器につなげば機器が故障したりするなど、契約とは異なる使い方をするのは良いことはないのでやめましょう。

電力自由化で、多様な小売電気事業者によるスタイルに合わせた細かなプランが増えています。
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